ーーーー1か月後。

黒マスクの男の事があってから、花灯は、ほとんど夜、外出しなくなった。

自分の為かな、なんて思って、来未は、慌てて首を振った。ただ夜、外にいく用事が無いだけ、それだけだ。

飼い主と捨て猫の関係なんて。

お昼を食べ終わってすぐに、花灯の呼び鈴が鳴って、二階に登った私は、いつものように、窓から、花火屋を後にする、お客様の後ろ姿を見ていた。

30代くらいだろうか?平凡な主婦のように見える。 

「平凡ね……」 

窓辺から外を見るのをやめて、壁を背にして膝を抱えた。今日もいいお天気だ。真っ青な空に、綿菓子みたいな雲が浮かんで、目を細めるほどの太陽の光が降り注いでいる。 

平凡。普通。当たり前。全て、誰かの物差しで勝手に区切られたカテゴリーにすぎない。

(じゃあ、殺しは?)

非凡なことでや異常な行為だろう。

ただ何らかしらの理由があり、その理由を、正当化する為に殺すのは正義かと、聞かれたなら、自分は迷わず、正義だと答えるだろう。

世の中には、善人と、悪人がいるように、生きててもいい人間と、死んで当然の人間がいると少なくとも自分は、そう思っている。

「来未」

花灯が襖を少しだけ開けて、自分の名前を呼んだ?

「はい」 

「ちょっと……」

それだけ言うと、花灯は一階に降りていく。

慌てて、来未も花灯の後を追った。