「此処は、イベント広場から離れてる。夜は、ほとんど人も来ない。何処にも行く場所のないホームレス達が、ちょうど、池から見て、300メートルほど先の、茂みで夜を過ごしてるんだ。今朝、公園の警備員に通報したのも彼らのうちの一人だと分かっているし、財布から一万円札を抜き取ったことも、白状してる」 

相川は、先輩刑事の蓮野とタッグを組んで一年になる。仕事は早いが、掴みどころがない蓮野を恨めしげに眺めた。

「ってことで、死体みたけど、どこも傷ついてないし、恐らく、もう、一件の心中事件と繋がってんじゃない?」

相川の大きな瞳が、さらに大きくなる。

「ちょっと待ってください!まさか、蓮野さんが遅れたのって、そっち行ってたんですか?」 

「さぁ、どうかな、忘れちゃった」

蓮野は、相川の入れたビニール袋の証拠品の中から、手袋を嵌めた手で、その中の一袋だけを摘み上げた。

「これは?」