西川の姿を見送ってから、花灯は、文香の散らばった私物の中から、手袋をしたまま、ソレを持ち上げた。

待ち受け画像は、あの日のままだ。最後に一緒にした線香花火の写真……。

『蛍、写真撮ってやるよ』

『やだよ、恥ずかしいから、手元だけ撮ってよ』

そう言って、花灯から視線を線香花火に戻して、儚くも小さく、仄かに光を放つ様をじっと見つめる蛍に見惚れた。

蛍の華奢な白い手に握られた、線香花火の火花が儚く揺れて、小さな星屑を散らしたような光を微笑んで、見つめる蛍を忘れられない。

そんな蛍の手元の線香花火を撮ったのが、つい昨日のことのように思い出される。

『見て、私みたい……』

線香花火のオレンジ色のまあるい先端は、小さな蛍の発光する様と酷似している。

『ねぇ、花灯、蛍が光るのは、好きな人を呼んで探してるんだって』

『……へぇ』

髪を掻き上げた、花灯を見ながら、クスクスと蛍が笑う。