『妊娠したのよ、あの子』

『え?』

ビジョンの中の、文香の手が思わず震えている。恐怖じゃない、嫉妬だ。

大樹の子を宿したあの子への憎しみと嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。

『どうすんの?警察に言われたら……』

愛瑠の腕が、文香の肩に食い込んだ。

『……子供さえ生まれなければ、DNA鑑定できないし、大丈夫よ。あれから3週間経ってる。警察に言うならとっくに言ってる。大輝の体液は検出されない。証拠は何もない』

『どうやって……生まれないように……』

『決まってんでしょ?適当に突き落として』

『そんなこと……』 

『じゃあ、いつか大樹が捕まるかもしれない恐怖を抱えて指を咥えて見てなさいよ。私は関係ない』

愛瑠は、文香の肩から手を離すと、両手を握りしめた。

『……上手くやるわ、でも、共犯よ。忘れないで』  

(共犯?馬鹿な女……何の証拠もないのに。罪を犯したのは大樹、あの女から子供を、奪うのは愛瑠。私は何もしてない)

ビジョンの中の、文香の顔は、嫉妬に歪みながら、醜く、三日月に歯を見せて笑っていた。