「え?」

思ってもなかった西川の言葉に思わず、目が丸くなった。

「去年、雨で会社の飲み会が中止になってね、私が預かってたんだけど、邪魔だから処分したいの。そのまま捨ててもいいんだけど、せっかくだしね」

「そうなんですね、じゃあ……」

西川は、手際よく蝋燭に、梵字の書かれたマッチ箱からマッチを取り出し火をつけた。真っ暗だった、辺りに明かりがほんのり灯る。

「はい、どうぞ」

西川は紙袋から、花火を取り出すと、文香に渡し、自分も花火も手に持った。

互いに、蝋燭に花火の先端をかざすと、小さな火の粉から、すぐに火花が飛び散る。

「こ……し……たの?」

ジュッと燃え上がる花火の音で、西川の声がよく聞こえなかった。

辺りは白い煙に包まれて、此処ではないビジョンが映し出される。

「嘘……」

文香は、目を見張った。