「気がきくんですね」

含み笑いをした西川から、手渡された缶ビールの、プルタブを開ける。

文香は、一気に飲み干した。お酒は強い方だ、この程度じゃ酔わない自信がある。西川も、プルタブを開けると喉を鳴らした。

「ねぇ、この間の会話は忘れてあげる。私にはどうでもいいことだし、興味ないの。だかは、章介のこと手を引いてくれない?」

文香は、思わずニヤけそうになった。西川の事だ、自分の秘密などより、一番欲しいのは章介だ。

「……わかり、ました……。彼、私に本気じゃなくて、私のコネが目当てなんです……分かってたのに、本気になってしまって、西川課長には不快な思いをさせてしまい、すみませんでした」 

精一杯しおらしく、頭を下げて見せる。 

西川は満足気に唇をひきあげた。

(とりあえず、西川には、章介を与えておけば、どうにでもなる)

「分かってくれて、嬉しいわ。これからは仲良く仕事できそうね」 

「はい、ご指導、宜しくお願いします」

勝ち誇ったような西川からら差し出された掌を文香も握り返した。

「じゃあ、仲直りに花火でもしない?」