ーーーー土曜日の午後9時。

西川から指定されたのは、郊外にある大型公園だった。ちょうど野外イベントも開催されていて、多くの人で賑わっていた。

文香は指定された、イベント会場とは反対側の公園中の池の前でベンチに座った。あたりは真っ暗で誰もいない。

月の光に反射して池の水が揺れる。あめんぼだろうか?小さな魚だろうか?暗くて見えない。
本当のことは暗くてよく見えないものだ。

分かりやすいのは、表面上の仮面を、被った偽りの自分だけ。

「お待たせ」

西川は、紙袋と白いコンビニ袋片手に文香の、背後からやってきた。西川は、珍しく黒のTシャツに黒のワイドパンツだった。

「こんなところに呼び出して何の用ですか?」

「波多野ちゃんこそ、言えないコトしてんでしょ?分かってるんだから」

(西川にあのことは、バレてる筈がない。手元にはスマホもある)
あのあと、愛瑠から渡されたスマホの日記の内容を全て見たが、とても、これは、家には置いて置けない。手元に持ち歩くのが一番安全に思えた。

「何のことですか?」

(愛瑠との会話で聞かれてマズかったのは、罪を犯す云々の辺りくらいだ)

「シラフで話せることじゃないわよね、はい」

たしかに蒸し暑い公園で、すでに緊張から喉がカラカラだ。