一体どうやって?

文香が女から見せてもらった時は、液晶画面は割れて、電源も勿論入らず、スマホには亀裂まで入っていた。

この辺の一般的な業者では絶対無理だ。それにそんなモノ持ち込んで、あとから何かあったら……。

「見て、黒髪の彼女、日記つけてたのよ、スマホアプリでね」

(日記……)

思わず手がカタカタと小刻みに震える。

あははははっ、女が、文香の顔を見ながらひとしきり笑った。

「何て書いてあったと思う?」

ーーーー声が出ない。何て書いてあるのかなんて、知りたくもない。女は、小首を傾げながら、真っ赤なルージュを引き上げる。

「うーん、まず、あの日の3週間前の日記。
『妊娠してた、このこと、あの人に言えば何ていうかな、私は嬉しい。ずっと家族が欲しかったから』」  


ーーーーえ?

「驚くよねー、大樹の子じゃないんだもん」

嘘……あの大人しい、男なんか知らない純情を絵に描いたようような、可憐な女が、男を知ってた上に……あの日より前に妊娠してた?それじゃあ……。私は何の為に……。

「ぷっ……文香、すっごい醜い顔。じゃあ、当日ね『悲しい、辛い、苦しい、汚れた私はどうしたらいいの?……私は……』このあとね、色々書いてある、アンタの名前も含めてね」

女は、こちらに向かって、ぽいとスマホを文香に放り投げる。

震えた両手で包み込むように、文香はスマホを受け取った。