キャッチコピーは、『花火が終わる時、隠された秘密の火花と共に命の灯火は消える。ただしあなたの欲望次第』

完全消去される前に、もう一度、花火の取り扱い説明書きを、西川はスマホで見ていた。

「あの、驚いた顔……」

西川は、一人暮らしの1Kの部屋のシングルベッドに身体を預けた。

今日もあの女に、章介につけられた痕を見せつけられるのかと、うんざりしていたのに、面白い事を聞いてしまった。

『罪をなんて犯してないわ……』

ーーーー何だろう? 

あの若さと身体と、したたかな思考で、男を(たぶら)かす、ろくでもない女だ。

罪?金持ちの所帯持ちの男が本命で、奥さんから脅されているとか?

「または、誰かを殺してるとか?」

そう言葉に吐いて、西川は、可笑しくなった。

さすがに、お金の苦労もない部長の娘が、人殺しなんて、現実味がないからだ。

でも、なぜ文香があんな風に慌てて、怯えていたのか分からない。尋常じゃない顔つきだった。

「明日が楽しみね」

明日には、全てが分かる。あの怯えた顔の文香の秘密も。章介とどんな話をしてるのか。どう(たぶら)かしているのか。

そして、文香は自分の目の前から、消えるのだ。勿論不慮の事故で。自分の手は汚さない。あの女さえ消えれば、章介は、必ず手元に帰ってくる。

「ふふっ、待ちきれない。あの女の、化けの皮を剥ぐのが」

西川は、先日受け取った花火の入った紙袋を眺めながら、薄く笑った。

文香に、明日の待ち合わせのラインを送ると、西川、久しぶりに穏やかに気持ちで眠りに堕ちていった。