「アッ……章介……」
シングルベッドが軋む。章介との体の相性は悪くない。
「後ろ向いて……」
そのまま、文香の腰に手を当てると、章介の熱は奥深くまでねじ込まれる。
「ンッ……あ………や」
「文香……綺麗だよっ」
そのまま突き上げられて、文香の目の前が白くなると共に、章介のモノが、お腹の奥に突き刺さるようにして、吐き出される。
章介は、避妊具を縛るとゴミ箱に無造作に放り投げて、文香を抱き寄せた。
「気持ち良かった?」
毎回、聞かれるこの質問が文香は、とても面倒だった。吐き気がしてくる。
「うん……すごく……」
章介は、満足そうに唇を引き上げながら、文香を包み込むと甘く囁いてくる。
「好きだよ」
「私もだよ……」
思ってもないことを口に出すのも、慣れるものだなと文香は、心の中で可笑しくなった。
章介は、顔もいいし、セックスも上手だ。
ただ、文香にとっての章介の存在価値は、西川の嫉妬を、増幅させるためだけの火種でしかない。
ーーーー嫉妬する側なんて、二度とごめんだ。
黒い髪を揺らす、あの子の顔が、純粋な笑顔を思い出せば、憎らしくて、あの綺麗な顔を歪めたくなるほどに、未だに黒い感情が止まらなくなる。
「文香?どうかした?」
「幸せだなって」
誰かから、堪らなく嫉妬されることが、何よりも自己肯定感を高めてくれる。快楽を感じさせてくれる。
例え、本当は一番欲しかった愛情じゃなくても、嫉妬さえあれば、笑って生きていけるのだ。
「なぁ……今度結婚を、前提にお付き合いしてること、ご両親にお伝えしに言ってもいいかな?」
「どうしたの?急に……」
「いや、西川課長の文香に対する態度も、キツいし、今すぐじゃないけどさ、寿退社でもいいんじゃないかと思ってさ」
虫酸が走るのをなんとか、顔に出さないようにしながら、文香は微笑んだ。
「まだ、新入社員だし……もう少しだけ働きたいの……でも近い将来は、お願いね」
「分かった……、あ、今度の週末会える?」
章介は、文香の首筋に舌を這わせながら、キスマークをつけた。
「もう、また、課長に怒られちゃう」
今度は、甘くねだるように文香からもキスをする。
「浮気防止だよ」
そう言って、新たに真っ赤な痕を胸元に沢山つけてから、再び章介が文香に覆いかぶさった。
真っ白な天井を見上げながら、文香は明日の西川の顔を想像しながら、暗闇の中で白い歯を見せた。