「はい、彼にも話してみます。彼、早く帰るみたいなので」

肩をすくめながら、文香は、白のサマーニットに手を通した。

小さく舌打ちが聞こえてきて、西川は、そのまま更衣室をあとにした。

「ふふふっ……最高」

あの西川の嫉妬に満ちた顔、思い出しただけで、笑いが込み上げてくる。

他人からの嫉妬を向けれると、堪らなく文香は、快感を覚えるのだ。

それこそ、章介とのセックスよりも、その嫉妬の眼差しは、余程気持ちいい。妬ましいという人間の感情は、つまり、他人が欲しいものを自分が持っているという証だから。

「さぁ、ハンバーグの材料でも買ってかえろうかしら」

今日、お客様にワザと勧めなかった、お気に入りの淡い黄色のフレアスカートを見に纏い、文香は上機嫌で、章介の家の合鍵を、くるくると回した。