すぐに目を覚ました、由奈を健斗が、追いかけまわして、ベッドに押し付ける。暴れた由奈の足がベットサイドの積み重ねてあった雑誌にあたり、バサリと倒れて散らばる。

健斗が、何か暴言を、吐きながら、ポケットから取り出した粘着テープで、由奈の口と手首を、縛りあげていく。

何度も首を振り、涙を流す由奈の脚を無理やり開かせる。

健斗は、途中で目を逸らした。とても見て居られない。

由奈の恐怖に怯えた顔がこびりつきそうだ。

ーーーーー俺のせいじゃない。違う。健斗のせいだ。

由奈はすぐに起きてしまっていた。あの時、健斗から渡された、睡眠薬は睡眠薬じゃなかったのだろう。

くそったれ!ちゃんと眠らせる約束だったじゃないか。

花火は根元まで、その火花を散らし終わると
ビジョンはふわりと消えた。

「何だ?……あれ?奏多?」

あたりをキョロキョロと見渡しながら、健斗が不思議そうに、奏多を見た。

「……何だろうな……」
自分の声が酷く冷たく聞こえた。

「奏多、忘れたのかよ、あのウブなお嬢様、ヤッたとき最高だったわ」

「睡眠薬は?」

「はっ、睡眠薬なんか使って、ヤッてもつまんねぇだろ、あれは一時的に意識失うだけ。おかげで、臨場感たっぷりに欲求発散できたわ、ありがとな、奏多。ほんでもって今日は、来未ちゃんな」

健斗は奏多の肩に手を置いて、薄く口を開けて笑う。

コイツは、悪だ。生きてる資格のないクズだ。

「なぁ、健斗……」

「なんだよ?奏多、コワイ顔してさ、今度はちゃんと避妊するって」

「は?」

「今更、契約なし、なんて、言わせないぜ?何なら、由奈のこと、バラすからな。俺は弁護士先生に不起訴にしてもらうけど」

こんな人間は消去するに限る。世の中に蔓延(はびこ)る害虫だ。

奏多は、左手でススキ花火に火をつける。

「おいおい、もう花火はいいって」

「ちゃんと見ろよ……」

ススキ花火は、パチパチと小さな炎を爆ぜながら、健斗にまとわりつくように、その煙が纏わりついていく。

奏多は、煙を吸い込まないように右手の腕で鼻と口を覆う。

「……っ……はっ……ぐっ……」

健斗が、首元を掻きむしるようにして、顎を空に向けている。空気を求めて、肺を動かそうとしているが、口元からは、涎だけが垂れ下がっている。

白目を剥き出すようにして、充血させると、ガタイの良い身体は、ガタガタと震え出した。

「ひっ……ぐ…………っ……」

顔を引き攣らせながら、奏多の事を、絶望の瞳で見つめるゴミ屑を眺めながら、心地よい優越感に、奏多は浸っていた。