「奏多、おはよう!いつもありがとな」 

その日、朝からご機嫌の健斗に、奏多は、できるだけ平静を装う。

「いや、『契約』とれるよう頑張るよ」 

奏多の言葉に、健斗が、真っ白な歯でいやらしく笑った。

「お前なら、もう『契約締結』間違いなしだろ」

ホワイトボードには、今月の営業成績No. 1藤野奏多と黒字で書かれており、赤字で花丸が付いている。

反吐(へど)が出るとは、このことだ。

奏多は、デスクに座り、パソコンを開けると、メールを送信する。

『今夜屋上で19時に』

すぐに返信は来る。

『楽しみにしてる』

奏多は、その文字を眺めながら、口元を緩めた。