「え?」

いつも穏やかで、他人の悪口など聞いたことない来未にしては、少し意外な言葉だった。

なぜか、その声色も、ひんやりと感じたのは気のせいだろうか。

「あ、ごめん……奏多が、心配でたまらないの」  

「大丈夫だよ、ありがとうな」

奏多は、ご馳走様と箸を置くと、そのまま、来未の手を引いて、シングルベッドに組み伏せた。

「来未……好きだよ」

そのまま、口付けて、来未の甘い声を聞きながら、今夜も一つに重なっていく。

「奏多……優しくして」

来未が、初めての女だった。本気になったのは。

何度も突き上げて、来未の奥深くまで繋がっていく。 

家庭的で、優しくて、容姿も美しく、スタイルも抜群だ。黒目がちな大きな瞳が、俺に向かって微笑めば、それだけで幸せな気持ちになる。

来未は、奏多の今までの女の良いところを全部合わせたような理想の女だった。

誰にも渡したくない。あんなクズの健斗など、もってのほかだ。 

奏多のスマホが震えて、ラインがメッセージを告げる。

『早く、受け取れよ』

奏多の腕の中で、長い睫毛を揺らしながら、安心しきった顔で眠る来未を見ながら、奏多は、起こさないように、暗闇の中を起き上がる。

いい加減、もうこんなクズにいいようにされるのはごめんだ。


ーーーー『居なくなってくれたらいいのに』


本当だ。誰にも気づかれずに居なくなってくれたらどれだけいいか。

または、誰にも知られず、完璧に消してしまえたら。

奏多は、パソコンの電源を入れると、検索を始めた。

そして、ふと、検索画面に釘付けになる。

キャッチコピーは『花火が終わる時、隠された秘密の火花と共に命の灯火は消える。ただしあなたの欲望次第』

「もう、終わりにしようぜ」

奏多は、唇の端を持ち上げた。