「さてと……どっから話せばいいかな?」 

どこから?それはこちらが聞きたい位だ。

あの日、花灯に殺してもらったはずの自分は、こうして、チューブに繋がれながらも、生きていたのだから。 

「花灯……は?」

僅かに男の視線が揺れた。それを見た、来未の心臓の鼓動は、緩やかに確実に早くなっていく。

「さぁね……。全部背負って『消えた』から」

男は、1ヶ月前の新聞を来未の目の前に、ポンと置いた。

来未が、あまり力が入らない右腕を何とかあげようとしたのを見た男が、黙ったまま、ベッドのリモコンを操作して、来未が、新聞を見やすい角度にベッドを傾けた。

そして、新聞を広げるとある記事を人差し指で指差した。

そこには、現役刑事2人が撃たれ、1人が殉死した事件が小さく記載されていた。

刑事の名前は、蓮野千夏警部補と相川流唯巡査部長。古い倉庫で、何者かに拳銃で撃たれたと書いてある。

撃った犯人と思われる男は、拳銃を持ち去り現在行方不明。

「あなたが……蓮、野さ……ん?」

「猫は鼻が利くね」

千夏がクスッと笑った。