「バレてんだよ。お前が、男のフリしてんのも、志田愛瑠だってこともな……まず波多野のスマホ、あ、蛍のスマホか。復元した時に、志田愛瑠にも、蛍殺害の動機があったことを知ってさ、ピンときた訳。で、志田愛瑠は、当時、志田大樹が、親しく付き合っていた古林洋介と何らかの秘密を共有していて、現在も繋がっているんじゃないかと思ってね……更に、極め付けは、3年前、蛍殺害現場に残されていた、志田大樹の毛髪のDNAとアンタの毛髪のDNAの一部分が一致したからだよ」

「……よく喋りますね」

女は、首を傾げると、呆れたように、ため息を吐き出した。


「慣れてるだろ?『相川』は」


ふふっと笑い声を漏らすと、ようやく、目の前の人物は、キャップを放り投げた。

顕になった、長い髪の毛をさらりと揺らしながら、相川が、二重瞼をにこりと細めた。

「やっぱバレてましたか、蓮野さん、さすがですね」

「もうちょい偽名も考えたら良かったのに」

(相川流唯、『あい』かわ 『る』い、愛瑠(あいる)だ)

「ですね」

相川は、ピンクのルージュを引き上げながら、拳銃をこちらに向けた。

「何、もう僕殺すの?」

両手を挙げながら、千夏は、ゆるりと笑った。

「……大樹は、どこ?」

「何処だろね、僕が話すと思う?」

「いいかげんにしてっ!」

相川は、千夏の目の前まで近づき、拳銃を胸元に突きつけた。

千夏は、瞬き一つせずに、相川を見下ろす。