ーーーー此処へ来るのはいつぶりだろうか。
手元の時計は、22時45分。まだ少しだけ早い。
古びた倉庫は、3年前に、蛍を探しに駆けつけた時より、遥かに荒れ果てている。誰にも管理されていない倉庫はもはや廃墟と化し、煙草の吸い殻や酒の空き缶があちこちに散らばり、壁にはスプレー缶の落書きが目立つ。
千歳は、床にしゃがみ込むと、手に抱えていた、かすみ草の花束を壁際に立て掛けた。
蛍の好きだった花だ。
誕生日には必ずこの花をプレゼントしたのを思い出す。いつも、大袈裟な程に蛍は喜んでいた。
『お兄ちゃん、かすみ草の花言葉知ってる?』
『いや、何?』
蛍が、千夏を見上げながら、にこりと微笑んだ。
『感謝と幸福だよ。お兄ちゃん、いつも有難う。お兄ちゃんの妹に生まれて、私、幸せだよ』
そんな蛍が可愛くて、愛おしくて、思わず、抱きしめたのが、つい昨日の事のようだ。
自分の時は止まってしまったから。
ーーーー此処で、蛍が死んでから。
手元の時計は、22時45分。まだ少しだけ早い。
古びた倉庫は、3年前に、蛍を探しに駆けつけた時より、遥かに荒れ果てている。誰にも管理されていない倉庫はもはや廃墟と化し、煙草の吸い殻や酒の空き缶があちこちに散らばり、壁にはスプレー缶の落書きが目立つ。
千歳は、床にしゃがみ込むと、手に抱えていた、かすみ草の花束を壁際に立て掛けた。
蛍の好きだった花だ。
誕生日には必ずこの花をプレゼントしたのを思い出す。いつも、大袈裟な程に蛍は喜んでいた。
『お兄ちゃん、かすみ草の花言葉知ってる?』
『いや、何?』
蛍が、千夏を見上げながら、にこりと微笑んだ。
『感謝と幸福だよ。お兄ちゃん、いつも有難う。お兄ちゃんの妹に生まれて、私、幸せだよ』
そんな蛍が可愛くて、愛おしくて、思わず、抱きしめたのが、つい昨日の事のようだ。
自分の時は止まってしまったから。
ーーーー此処で、蛍が死んでから。