唇に塗って置いた、睡眠作用を含ませておいたグロスのお陰で、行為が終わるとすぐに古林は眠りについた。愛瑠は、元通りサラシを巻いて服を身につけると、リュックの中から、花火屋から受け取った花火を取り出す。

「まずは、凶器の場所、吐いてもらうから」

愛瑠は、梵字が書かれたマッチ箱からマッチを取り出し、スパーク花火に火をつけた。

ジュッと音を立てると、あたりは火花と共に白い煙に包まれていく。

愛瑠は、浮かび上がるビジョンに目を凝らした。

 

(……これは3年前のあの日……?)

雨の降る窓の外を眺めながら、タバコを蒸している古林の元に電話が掛かってくるのが視える。

『あん?誰だ?』

スマホに表示されているのは、公衆電話からだ。

『なんだよ、お前かよ。大樹どうかしたのか?』

大樹の返答に耳を澄ませている、古林の顔色が変わる。

『お前っ、殺しだけはすんなって言ったよな!お前が捕まって、コカインのルートがバレたら、俺もお前も奴等に消されんだぞっ!』

激昂した洋介は、スマホを耳に当てたまま、咥えていたタバコを灰皿に押しつけた。

『ちっ……分かった、今からすぐ、愛瑠に会って受け取ってくる。……分かってるよな?ルートのことは死んでも言うなよ?もしサツにしゃべったら、愛瑠も道連れだからな!……あぁ、もう二度とかけてくんな!』