「遅かったな、愛瑠」

一重の瞼に、無精髭を生やし、赤色に染められた短髪を掻きながら、古林洋介が、いやらしく笑った。

部屋の中はカーテンが閉められていて薄暗い。

「知ってるでしょ、忙しいの」

「だろうな、お前のお友達の波多野文香が、消されたんだからさ」

「アタシは関係ない」

「どうだかな、で?Kは誰か分かったのか?」

「大体ね、うまくやっとくから」

そう、先日古林のバーにKという男が訪ねてきた。志田愛瑠の名前をダシに使って。相手は気づいてるのだろう。

志田大樹の事件に、自分と古林が関わっていると言うことを。


「本当に、この三年、大樹から……連絡ないのよね?」

「ねぇよ、あったらお前に言ってる、大樹は俺の弟分だからな」

古林は、愛瑠をタバコの火をいくつも落とした薄汚れた布団の上に押し倒した。

「よくそんなデマカセ言えるね。コカインを流してた件も全部大樹のせいにしたくせに」

「今まで通り、こうしてヤラせてくれて、コカインの販売ルート確保してくれるなら、大樹の使った凶器は、一生出てこないから」

古林は、着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。