その指先は、来未の首を一気に締め上げる。できるだけ苦しまないように。

すぐに意識を失うように。

頭の中が呼吸出来ずに、もがきながら、暗い深海へ堕ちていく。

(由奈……お父さん……お母さん)

最期の力を振り絞って、花灯の腕に手を伸ばした。

「……い……きて……」


ーーーー生きて。


花灯にちゃんと届いただろうか。花灯の恋人が生きていたならば、そう言うんじゃないかと思った。

自分は、生きるのが辛くて逃げ出すクセに。死ぬ事まで花灯に手伝ってもらうクセに。

「……ありがとう」

停止した思考と呼吸で、意識が真っ暗になった闇の中で、花灯の声と、ジュッと花火が、燃え上がる音が微かに聞こえた気がした。