「どうした?名推理はおしまいか?」

来未は、俯きがちの瞳を無理やり、上を向けた。

ーーーー花灯の大切だった人は、姉、又は妹か……恋人。

「詳しい理由はわからない。でも……あなたの恋人が殺されたから」

思った以上に自分の発した声は、落ち着いた感情のない声だった。もう自分自身もとっくに心は死んでいたのかも知れない。苦しみと憎しみに食い散らされて。

花灯の瞳が、大きく見開かれて、揺れた。

「……泣くな」

来未は、掌で自分の頬に触れる。指先に触れた水分が、自分の瞳から転がったことに気づいて、慌てて拭う。

「ごめ……なさっ……」

ーーーー自分でも何の涙なのか分からない。

花灯も大切な人を失ったことへの同情の涙なのか、自分の中に抱えた虚しさが溢れてしまったからなのか。

それとも罪悪感だろうか。

他人の知られたくない秘密を勝手に抉るように言葉にだしたことへの。