「……この間死んだ……西川さんが、花火を受け取って帰ったの二階から見てたの」

「それで?」

「西川さんは、波多野さんか、波多野さんの恋人の高瀬章介のどちらかを花火で殺した。……私は一度接触してるから……多分、西川さんは、波多野さんにススキ花火を使って殺したと思ってる」

花灯は、ただ黙って来未の言葉に耳を傾けている。

今日こそ殺されるかもしれない。

それならそれで構わない。大好きな人が誰もいない、この世にもう未練など、とうにないのだから。

「……じゃあ、どうして西川さんと高瀬さんは、二人で心中したのか」

来未は、乾いてきた下唇を、湿らせた。

「答えは簡単。心中じゃなくて、心中に見せかけて殺されたから……。あなたか、黒マスクの男に」

花灯は、髪を掻き上げると、頭を少しだけ傾けて、小さく溜息を吐き出した。

「理由は?俺か、その来未のいう、黒マスクの男が、西川と高瀬殺しに関わってるっていう理由」

理由……。花灯と暮らしていて感じていた疑問がすぐに頭に浮かぶ。

花灯はここで誰かと暮らしていた。そして、その人物は、花灯の大切な人だ。それも大切に洋服を取っておく位に。でもおそらく、いや、もうこの世には居ない。

花灯は、自分を鏡に映しているかのように、その瞳は、哀の感情がこびりつくように深い藍色と黒色が混ざっていて、いつだって、泣きそうだから。