「花灯、今日は満月だよ」
来未は、ガラス戸を見上げて、仄かに光る、まあるいお月様を眺めながら、亡き妹の由奈を思い出す。
2ヶ月程前に、来未によって重症を負わされた藤野奏多と、藤野によって殺された谷部健斗が警察に起訴されたニュースをみて、一時の安堵感と達成感を得たのは、まるで一瞬のまやかしで、由奈が、もうこの世に居ない喪失感は、日に日に積もるばかりだった。
「……花灯は?……人を殺したの?」
「どうして?」
花灯は、視線を逸らさずに、来未を見つめた。
来未は、丸椅子から立ち上がると、花灯の目の前に立ち、長身の彼を見上げた。
そして、もうずっと前から花灯に対して、感じていた言葉を口に出した。
「……花灯の瞳は、人を殺した事のある瞳だから……」
「ふっ……そうかもな」
ズルい答えだ。肯定とも否定とも取れる返事に、来未は僅かに苛立ちを覚えた。
「……あの黒マスクの男と殺してるの?」
聞かれたくない事だったのだろう。僅かに花灯の纏う空気が変わった。花灯は、髪を掻き上げると、その綺麗な切長の瞳で来未を見下ろした。
「じゃあ、そうだと言ったら?」
花灯の、その声色と視線に背筋が、ピンッと凍りつく。
来未は、ガラス戸を見上げて、仄かに光る、まあるいお月様を眺めながら、亡き妹の由奈を思い出す。
2ヶ月程前に、来未によって重症を負わされた藤野奏多と、藤野によって殺された谷部健斗が警察に起訴されたニュースをみて、一時の安堵感と達成感を得たのは、まるで一瞬のまやかしで、由奈が、もうこの世に居ない喪失感は、日に日に積もるばかりだった。
「……花灯は?……人を殺したの?」
「どうして?」
花灯は、視線を逸らさずに、来未を見つめた。
来未は、丸椅子から立ち上がると、花灯の目の前に立ち、長身の彼を見上げた。
そして、もうずっと前から花灯に対して、感じていた言葉を口に出した。
「……花灯の瞳は、人を殺した事のある瞳だから……」
「ふっ……そうかもな」
ズルい答えだ。肯定とも否定とも取れる返事に、来未は僅かに苛立ちを覚えた。
「……あの黒マスクの男と殺してるの?」
聞かれたくない事だったのだろう。僅かに花灯の纏う空気が変わった。花灯は、髪を掻き上げると、その綺麗な切長の瞳で来未を見下ろした。
「じゃあ、そうだと言ったら?」
花灯の、その声色と視線に背筋が、ピンッと凍りつく。