おそらく、自分を殺しにきた、あの黒マスクの男と花灯は知り合いだ。

そして、殺される直前に花灯がギリギリ、助けてくれたのだと思う。そうでなければ、辻褄が合わないから。


「何で、私を殺さないんだろう……」　


「ーーーー死にたいのか？」　

音もなく裏口の方から声がして、振り返れば、全身黒尽くめの花灯が、居間からこちらを見下ろしていた。

「あ……おかえりなさい」

黒マスクの男と同じだ。花灯も気配を消すのが上手い。花灯は、長めの前髪を揺らしながらショーケースの花火を掌で撫でた。

「で、さっきの返事は？」

さっきのと言うのは、来未の呟いた言葉だ。

「死んでもかまわない」

いくら、復讐を遂げても、由奈は……妹は還ってはこない。

「……復讐なんて、そんなモノだよ。得られるのは、僅かな自己満足だけ。死んだ人は帰ってこない」

「虚しいね……」

来未は、クスッと笑ってみせた。