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 026_死の森合同作戦(五)
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 テントの中で【異世界通販】で購入したLEDランタンの光を頼りに、銃のメンテナンスをする。【銃器製作】は銃を造るだけでなく、メンテナンスもできるものだ。
 ダンジョンにはしばらく入っておらず、メンテナンス後に【ストック】に入れっぱなしにしてある銃だ。
【ストック】内では時間経過がないため、メンテナンスして入れておけば、その状態がいつまでも維持されるのだが、心を落ちつけるためにもメンテナンスをしている。

 ●五・五六ミリ弾用自動式拳銃:バレル長八センチ、装弾数五発、一丁
 ●七・六二ミリ弾用自動式拳銃:バレル長一〇センチ、装弾数一五発、二丁
 ●七・六二ミリ弾用自動式拳銃:バレル長一五センチ、装弾数一五発、二丁
 ●七・六二ミリマグナム弾用回転式拳銃:バレル長一五センチ、装弾数六、二丁
 ●九ミリマグナム弾用回転式拳銃:バレル長一八センチ、装弾数六、一丁
 ●五・五六×四五ミリ NATO弾ボルトアクション式狙撃銃:装弾数一五発、スコープなし、一丁

 時間がないことと材料がなかったことで、狙撃銃のスコープは造れなかった。
 各銃のメンテナンスが終わると、スピードローダーやマガジンに弾丸をセットしていく。
 カチャッ、カチャッとマガジンへの装弾時の音だけが響く静かな時間だ。こういう時間は心が落ちつく。




 朝日と共に起き出しテントの外で背伸びをする弾路の目に、ビンセントやメイドたちが忙しく動き回る光景が映る。
 料理人は居ないが、執事とメイドたちによってイリアの食事が用意されていく。もちろん遠征用の質素なものだが、温かいものを用意している。
(こんなに早い時間なのに、食事が用意されているんですが? ビンセントさんたちは寝ているのだろうか?)
 弾路は知らないが、ビンセントはもちろんメイドたちもそれなりのレベルの戦闘メイドである。イリアの身を護るのは何もイーサンのような騎士たちだけではないのである。

「これはダンジ様。おはようございます」
「「「おはようございます」」」
「皆さん、おはようございます」
 ビンセントとメイドたちと挨拶を交わすと、弾路も手伝うと提案する。
「滅相もございません。ダンジ様は相談役にございますれば、お嬢様の相談を聞かれるのがお仕事です。これは我らの仕事にございます。ダンジ様に手伝ってもらうなど以ての外なのです」
「そ、そうですか……」
 それぞれの仕事がある以上、その領分を犯すのはよくないと思って引き下がる。

 朝食はイリアと数人の貴族と共に摂る。この作戦中は、貴族たちと食事を摂るのがイリアの仕事のうちなのだ。
 イリアは公爵としてしっかりと部下の貴族たちとコミュニケーションを取っている。貴族のほうもイリアから情報を引き出すことに、こういった食事会を利用する。
 特にドルバス侯爵の派閥の貴族たちは、イリアの弱みを探るためにどうでもいい話をすることが多い。どんなことから弱みが見つかるか分からないからだ。
 イリアも揚げ足を取られないように、言動には気をつけている。それでもこういった食事会を通して貴族たちの敵意を測ることができることから、目耳を働かせて貴族の言動に注意を払っている。

「相談役殿は日頃何をされているのかな?」
 肩身の狭い思いをしながら食事をしていると、貴族の一人が弾路の仕事を聞いて来た。
(僕の仕事ってなんだろうか? 冒険者? 銃の鍛冶師? よく考えたら、僕ってプー?)
「ダンジは日頃も私の相談役だ。皆には言えぬことも相談しているぞ(笑)」
「なるほど、そうでしたか。存じませんでした(笑)」
(イリアも貴族たちも目が笑ってないんですけど……)

 食事が終わると、すぐに会議だ。
 弾路は常にイリアのそばにいるだけで、相談役らしいことはしていない。
(イリアは大変そうだけど、そんなことを顔に出さない。さすがは公爵様といったところだけど、僕はなんのためにここに居るのだろうか? 僕の存在意義ってなんだろう?)
「それでは事前に打ち合わせたように、冒険者が中央と西、ドルバス侯爵の軍が東を受け持ってもらう。三〇分後に作戦開始だ。質問はあるか?」
 イリアは出席者をぐるりと見渡し、質問がないことを確認して会議を終了させた。

 冒険者とギルド関係者が全員、貴族のほとんどが大型テントの外に出て行く。残ったのはわずかな貴族とイーサンと騎士が三人、ビンセント、イリア、弾路である。
 残った貴族たちはイリアに近い者たちで、公爵軍本体の周辺に麾下の軍を配置している。

「閣下。ドルバス侯爵は上手くやりますでしょうか?」
 四〇近い年齢の長い茶髪を首の後ろでまとめた貴族が、にやけ顔でイリアに問うた。彼はイスバハン子爵。イリアの家庭教師をしていた人物で、幼い頃からの付き合いだ。
「どちらでも構わん。上手くやれば褒めてやり、失敗すれば叱責して責任を問うだけだ」
「それもそうですな」
 イスバハン子爵は反ドルバス派の貴族で、ドルバス侯爵が失敗することを願っている。イスバハン子爵が失敗すれば、首を切ることはできなくてもその勢力を削ることができる。
 このムドラ州の貴族は、イリアの下強固にまとまらなければいけない。それがイスバハン子爵の考えである。

 帝国内には他の公爵家もあり、死の森と敵国になり得るゴルディア国に隣接している。そういった潜在的な敵に食い潰されないためにも、ムドラ州内で勢力争いをするドルバス侯爵が邪魔なのだ。
 特に現在作戦行動を行っている死の森は、一度強力な魔物が出てきたら死活問題である。それは現実に起こりうる、過去にあったことなのだ。

 さて、これだけの人員を動かすのだから、それなりの戦果が求められる。
 ドルバス侯爵軍にはAランクとBランクだけではなく、Sランクの魔物を最低でも一体は倒してもらう。それができなければ、責任を追及するだけの話だ。