縁日では王道のヨーヨーすくいや射的、綿あめづくり体験などが行われる。
んな中僕が担当を受け持つことになったのは、たこ焼きだった。
たこ焼きなんて焼いたことない。
だけど、そんなことは気にしなくていいらしい。
その理由はすぐに分かった。

お盆明けから二日間にわたって、本場大阪でたこ焼き屋のバイトを5年していたというエクアドル人から、たこ焼きの熱血指導を受けた。
流暢な関西弁で、僕の焦げて崩れたたこ焼きを大いに非難した。

「なんでやねん」
「ほんまかいな」
「なにぬかしとんねん」

きつい。
しんどい。  

こんなことなら塾でわけのわからない問題に当たって頭を抱えていたほうがましだった。 
あいつがカフェの受付のバイトをしながら涼しい顔で外国人や日本人の相手をする一方で、僕は店のバックヤードで、汗を流して熱い鉄板と関西弁に向き合っていた。

店内から流れてくるおしゃれな音楽やクーラーの風を感じることはなかった。
気合いと雰囲気のために巻かされたねじり鉢巻きには、汗がぐっしょりとしみ込んでいた。
タンクトップに法被を羽織らせられると、いよいよ僕は何を目指しているのかわからなくなった。
なんでこんなに怒られなあかんねん、と心の声が関西弁化していることに違和感さえ覚えず、僕は完全に自分を見失いかけていた。