「お疲れ様です、宮橋さん」

 テーブル席のすぐそこまで来た宮橋に、藤堂が真っ先にそう声を掛けた。労うような口調には優しげな響きがあって、申し訳なさそうに柔らかな苦笑を浮かべている。

「突然呼び出してしまって、すみませんでした」
「呼び出したのは三鬼だから、君が謝る必要はない」

 言いながら、宮橋が空いている二つの椅子のうち、一つを引っ張って腰掛けた。吸い殻の入った灰皿を前にした三鬼が、品もなく片足を楽に組んだ姿勢のまま「悪かったな」とぶすっとした声を出す。

 ここに座っていいのかな、と雪弥は残った空椅子をそっと引いて腰掛けた。そうしたら目の前にいた三鬼が、何を思っているのか分からない仏頂面でじっと見てきた。

 目もバッチリ合っている状態だというのに、視線を返しても遠慮なく見据え続けてくる。喧嘩っ早そうだと思っていた目は、意外とその人間を自分の目で真っすぐ見極めるような隙のなさが窺えて、なんで見られているのかと雪弥は顔が引き攣りそうになった。