体調は悪くないはずなのだが、と雪弥は妙な感じがした胸に目を落とす。

 宮橋が気付いて目を向け、片膝を立てて頬杖をついた。しばしガラス玉みたいな目で彼を見つめたところで、ふぅっと小さく息をつく。

「それがどういう感情(モノ)であるのか、分からない?」

 ふっと唐突に問い掛けられ、雪弥は少し遅れて彼を見つめ返した。

 一体何がですかと視線で問い掛けると、宮橋が「別に」とそっけなく言う。

「そもそも僕は、相談所をやるつもりはないからね。ああ、そうだとも。そのはずだった」
「あの……よく分かりませんが、もしかして怒ってます?」
「怒ってはないさ。ちょっと自分に苛々してるだけだ」

 と、宮橋が美麗な顔を少しくいっと上げて、指を向けてきた。

「一つ教えてあげよう。君は思考や望むのをやめてしまえば、と思ったわけだが」
「あれ? おかしいな、それ僕口に出していないはずなんですけど……」
「細かい事は気にするな。君、単純だから全部顔に出るんだろう」

 多分ね、と宮橋がどちらでも構わないような口調で言う。