さらさらと水が流れる静かな沢に辿り着いた。透き通った水は陽の光を反射して綺麗。
九郎は私を、岸にそっと下ろしてくれた。
良かった、生き返る。私は岸に膝をつくと、両手で水を掬い、口に運んだ。
「……ぷはっ、冷たい…!」
思わず声が出てしまう。体に沁み渡る感覚が気持ち良い。
そんな私の様子がおかしかったのか、九郎は傍らで「ふふっ」と笑った。
「…な、何か変だった?」
「いえいえ、そんなことは。フヨさんの一生懸命な姿を見てると嬉しくて。」
何目線で言ってるんだろ…。
ふと私は気づく。九郎も私と同じく歩き通しなはずなのに、水を飲もうとしない。
「…ねえ、あんたも飲んだら?
先はまだまだ長いんだから…。」
本当に付いて来るつもりなら。
それに担いでもらった手前、私だけ飲むのも気が引ける。
九郎は私の言葉が予想外だったみたいで、また少し驚いた顔をして見せた。
「ありがとうございます。
じゃあお言葉に甘えて。」
そう言うと九郎は、私のすぐそばに座って、私と同じように水を掬って飲んだ。
不思議。見た目は普通の…ちょっと育ちの良さそうな人間に見えるけど。
足袋と草鞋、脚絆を脱いで、私は疲れ切った脚を沢の流れに浸す。
「………ふぅ…。」
熱を持っていた脚が優しく揉まれていくよう。気持ち良い…。