「な、なにって…別に…」
「嘘ついてもバレバレだからね。ナディア、明るさが戻ってきたっていうか…なんか吹っ切れたような顔してるもん」
「そ、そう…?」

 そんなに顔に出ていたのか、とナディアは驚く。それと同時に、やっぱりアリスに隠し事はできないなと改めて思った。

「で、何があったの?」

 アリスに促され、ナディアはリュカに痣を見せたこと、綺麗だと言ってもらえたことをかいつまんで話す。するとアリスは「さすが、公爵さま!」と嬉しそうに叫んだ。

「やっぱり愛の力は偉大だわ…」
「なに言ってるのよ、アリスったら」

(そんなんじゃ、ないのに)

「例え誰がなんと言おうと、ナディアは綺麗なの。私だってそう思ってるし今までも伝えてきたでしょう?なのに、ナディアはぜーんぜん取り持ってくれなかったじゃない。なのに、公爵さまに一回言われただけで、そんなぽっぽしちゃってー!くー!悔しい!負けた!」

 ことあるごとにリュカがナディアを愛している、と言うアリス。何を言っても言いくるめてくるから、ナディアも半分諦めている。

「私そんなつもりじゃ…なかったのだけど…、なんだかごめんね」
「謝らないでよ、ちょっと…余計みじめになるじゃない」

 しおれるアリスにナディアは謝りながら、渡されたリンゴをカゴにそっと入れていく。

「でも…、ナディアが公爵さまに愛されてる自信が持てないの、ちょっとわかった気がする…。あの美しさは、確かに怖気づくのも無理はないっていうか…」
「そうでしょ…、あんなに綺麗な人が私みたいな…って、あれ?アリスって、公爵さまに会ったことあったかしら?」
「あー…」

 アリスは何か観念したような顔をナディアに向けると、口を開いた。