あっという間に一週間が過ぎ、ローズとのお茶会の日。
約束通り現れた迎えの馬車に乗ってローズの邸宅に降り立ったナディアは、リュカから貰ったドレスをまとい、手には手作りの洋ナシのケーキを持っていた。
手土産はいらないと言われたが、そういうわけにも行かず、自宅の庭の洋ナシをケーキにしたのだった。
「こちらです」
迎えに来た使用人に庭に案内された。そこは、誕生日パーティが行われたホールに面した庭だった。すでに数名のレディたちがにこやかに話に花を咲かせている様子だった。
「ナディア、待っていたわ。来てくれてありがとう」
ナディアに気づいたローズが、笑顔でナディアに歩みよってきた。
「ローズさま、本日はこのような華やかな場にお招きいただきありがとうございます」
「やだ、堅苦しい挨拶はなしよ」
「あの、粗末なもので申し訳ないのですが、こちら」
持ってきたケーキを差し出すと、ローズは「まぁ、ありがとう」と言って受け取ってくれた。こんなもの、と笑われて受け取ってもらえもしないのではと心配していたが、少なからず好意的なローズの態度に安心した。
「さ、座って、友人を紹介するわ」
紹介された中に、子どもの頃に通った女学校時代の知り合いが居た。
「ナディア、久しぶりね」
「コレット…?」
ナディアに名を呼ばれたブロンドヘアの美しい女性はその顔に笑みを浮かべてこくりと頷いた。コレットは、女学校でナディアと一番仲の良かった友人だ。フォーレ伯爵家の令嬢だ。
ナディアが女学校を退学して以来連絡を取ったことは一度もなかったから、かれこれもう10年振りくらいの再会になる。
それでも、ウェーブのかかったブロンドヘアとみずみずしい若草色の瞳が子どもの頃の面影を残していた。
「本当に久しぶり…会えてうれしいわ」
コレットは、ナディアの痣のことを一度たりとも悪く言わなかった唯一の友人でもあった。
「ローズさまから今日来ると聞いた時は驚いたわ。あなた、社交の場には全く顔を見せないんだもの」
コレットの言葉にナディアは笑顔で受け流す。家が貧乏貴族でとても社交場に出かける時間も余裕もないのです、とは言えなかったし、言わなくても周知の事実であるだろうからあえて言う必要も無かった。
約束通り現れた迎えの馬車に乗ってローズの邸宅に降り立ったナディアは、リュカから貰ったドレスをまとい、手には手作りの洋ナシのケーキを持っていた。
手土産はいらないと言われたが、そういうわけにも行かず、自宅の庭の洋ナシをケーキにしたのだった。
「こちらです」
迎えに来た使用人に庭に案内された。そこは、誕生日パーティが行われたホールに面した庭だった。すでに数名のレディたちがにこやかに話に花を咲かせている様子だった。
「ナディア、待っていたわ。来てくれてありがとう」
ナディアに気づいたローズが、笑顔でナディアに歩みよってきた。
「ローズさま、本日はこのような華やかな場にお招きいただきありがとうございます」
「やだ、堅苦しい挨拶はなしよ」
「あの、粗末なもので申し訳ないのですが、こちら」
持ってきたケーキを差し出すと、ローズは「まぁ、ありがとう」と言って受け取ってくれた。こんなもの、と笑われて受け取ってもらえもしないのではと心配していたが、少なからず好意的なローズの態度に安心した。
「さ、座って、友人を紹介するわ」
紹介された中に、子どもの頃に通った女学校時代の知り合いが居た。
「ナディア、久しぶりね」
「コレット…?」
ナディアに名を呼ばれたブロンドヘアの美しい女性はその顔に笑みを浮かべてこくりと頷いた。コレットは、女学校でナディアと一番仲の良かった友人だ。フォーレ伯爵家の令嬢だ。
ナディアが女学校を退学して以来連絡を取ったことは一度もなかったから、かれこれもう10年振りくらいの再会になる。
それでも、ウェーブのかかったブロンドヘアとみずみずしい若草色の瞳が子どもの頃の面影を残していた。
「本当に久しぶり…会えてうれしいわ」
コレットは、ナディアの痣のことを一度たりとも悪く言わなかった唯一の友人でもあった。
「ローズさまから今日来ると聞いた時は驚いたわ。あなた、社交の場には全く顔を見せないんだもの」
コレットの言葉にナディアは笑顔で受け流す。家が貧乏貴族でとても社交場に出かける時間も余裕もないのです、とは言えなかったし、言わなくても周知の事実であるだろうからあえて言う必要も無かった。