「仲が良いんだね」

 孤児院での用事を一通り終わらせて家に帰ると言うと、ノアが送ってくれると言うので一緒に帰り道を歩いていた。結局、ノアは最後までなんだかんだ手伝ってくれていつもより早く帰れることができたのだった。

「幼馴染のようなものです」
「羨ましいな」
「ノアさまは、仲のよいご友人はいらっしゃらないのですか?」
「友人はいるけど、君たちみたいになんでも話せるような間柄ではないかな。家のこともあったりして、なんとなくみんな本心を隠しているような感じもするし」

 公爵家ともなると、いろいろな思惑が飛び交って心を開けないのだろうか。そう思うと、恵まれている貴族というのもいろいろ大変そうだ。その点、リュカはライアンという気の置けない間柄の友人がいるのは幸いなことなのかもしれないと思った。

「そう、ですか」

 見上げた横顔は、どこか寂しそうだった。

「テオは、ルソー男爵家の3男ですが、孤児院の出身なんです。だからきっと、ノアさまのおっしゃるお家柄のことも気にならないのではないでしょうか。年の頃も近いですし、ノアさまさえ良ければ親しくして頂けると、きっとテオも喜ぶと思います」
「本当?なんか今日睨まれてた気がするけど」
「テオはもともと目つきが鋭いだけなんです」
「そうなんだ。仲良くしてもらえたら僕も嬉しいよ、ありがとう」

 本当に、すれた所のない人だなと思った。今日もすんなりとみんなの輪に入って、中心で笑ってるその姿はまさに太陽。パーティで初めて会ったときもそうだった。きっと一人でいるナディアを可愛そうに思ったのだろう。あの時話しかけてくれたノアの優しさや明るさに救われたのは確かだった。

「あの、この前は失礼をしました」

 リュカと鉢合わせた時のことを謝るタイミングをずっと見計らっていた。なんとなく話題にしづらかったのだ。

「あぁ、ベルナール公爵さまとのこと?全然、気にしてないよ。僕の方こそごめん。公爵さまにも謝っといてくれるかな」
「は、はい」

 と返事をしてみたものの、言えるだろうかと不安がよぎる。ノアのことを口にするとリュカがどうなるかは目に見えていて、火に油を注ぐようなものだから。

「また来ても、迷惑じゃないかな」

 家について別れ際、少しだけ遠慮がちにそう言ったノア。リュカのことを気にしているのだろうか。確かに、リュカはナディアがノアと会うことを良くは思っていないようだったが、リュカとの時間をおろそかにしなければ自分が誰と会っていようが問題ないのではとも思った。それになにより、寂しそうに話すノアを見ていたらとてもじゃないけど無下にはできなかったし、テオやアリスといった家族のような存在のほかに友人と呼べる人は居なかったナディアにとってノアの申し出は少なからず嬉しいものだった。

「もちろんです。だってお友達ですもの」
「…ありがとう、ナディア。じゃぁ、またね」

 さよならじゃなくて、またね。約束ではないけれど、別れでもない言葉を交わして互いに家路につく。なんとなく、胸があったかくなるような、不思議な感覚だった。