「おもてなし、してくれるんでしょう?」

 リュカが言うとなんだか違う意味に聞こえてしまって、ナディアは顔に熱が集中していく。

「あ、あの、決してそんな意味では・・・っ」
「どんな意味ですか?・・・はははっ」

 たまらず吹き出しながらそう問われても、赤面しながら口をぱくぱくさせるだけで言葉は出てこなかった。おかしそうに無邪気に笑うリュカを見ながらナディアは、胸の奥から押し寄せてくる切なさを感じていた。リュカが笑ってくれて嬉しいのに、切ない。なんなのだろうか、この気持ちは。寄せては返す波のように、ナディアを揺り動かしては戸惑わせた。

「送っていけず、すみません。ライアンの馬鹿とこの後少し用事があるので」
「馬車で送っていただけるだけで十分です」

 改めてお礼を言って馬車に乗り込む。
 ドアが閉められてリュカが見えなくなると、またあの気持ちがこみあげてくる。たまらず小窓を引いて開けてしまった。
 まだそこにいたリュカが一瞬驚いた顔を見せて、それから柔らかく笑ってくれた。
 眩しそうなものでも見るように目を細めて笑うリュカに、自分は今ちゃんと笑い返せているだろうか、まったく自信はなかったけれど、動き出す馬車の中から精一杯笑って手を振って応えたナディアだった。