「公爵令嬢とあろう方が人に手を挙げてはいけませんよ。せっかくの美しい手が赤くはれてしまいます」

 そう言って、リュカはローズの手の甲にキスを落としてゆっくりと離した。

「あ、あなた様は・・・」
「申し遅れました。リュカ・ベルナールと申します。本日はバースデイパーティへご招待頂き誠に感謝いたします」
「もちろん、存じておりますわ、ベルナール公爵様。来てくださっていたのですね!光栄ですわ!今日はおひとりで?」

 さっきまでの怒りはいずこへ。何事もなかったかのような態度でローズはリュカに詰め寄った。リュカは、そんなローズをかわす様に一歩下がると後ろで震えるナディアを抱き寄せたのだった。

「今日は、恋人と一緒に伺いました」
「え・・・?今、なんと・・・・?」
「恋人、と申しました」