「い、いえ、取ってきますので大丈夫です」
「私の好意は迷惑でしたか?」
捨てられた子犬のようにしょんぼりと悲しそうにリュカはつぶやいた。その声にナディアは動けずその場に固まってしまう。そんな風に言われたら、誰だって断れない。
「迷惑なんてとんでもないです・・・。では、ご厚意に甘えて失礼いたします」
しぶしぶ隣に座ると、ふわりとシトラスの香りがナディアの鼻をくすぐった。その久しぶりの香りになぜかいたたまれない気持になる。
「狭い屋敷で申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ突然お伺いする無礼をお許しください」
「そんな無礼なんてとんでもない!公爵さまのようなお方に来ていただけるなんて我が家は光栄です」
それで先ほどの事ですがーーーと父が話を戻した。
「せっかくご用意してくださったのに大変心苦しいのですが、お詫びの品は身に余るほど頂きましたので、こちらの品はどうかお引き取り頂けないでしょうか」
ナディアは、事の成り行きをただここに座って待つしかなかった。
「リシャール伯爵のおっしゃることはごもっともです。ただ、今日のプレゼントは、先日のお詫びではありません」
「・・・・と申しますと・・・?」
「恋人に贈るプレゼントとして持ってまいりました」
「っ!?こ、こ、恋人!?」
二人の視線はリュカからナディアへと移される。本当なのか?と。
「えぇ、実は、先日お会いした際に、ナディに・・・リシャール伯爵令嬢に交際を申し込んだのです。今日は、お二人にご挨拶も兼ねてこうしてお伺いした次第です。お二人がご存じない所を見るとどうやらナディは恥ずかしがりやの様ですね」
にっこりと薔薇の花が綻ぶように優雅な笑顔を浮かべるリュカを横目に、ナディアは心の中で頭を抱える。
(終わった。全てが水の泡に消えた・・・)
両親の視線を痛いほど感じながら、仮面の下で目を閉じた。
◇◇◇◇
「では行って参ります」
「失礼のないようにね」
「楽しんでおいで」
「大切なご令嬢をしばしお預かりします」
馬車まで見送りにきた両親にリュカはそういってナディアを馬車にエスコートする。さっき、リュカが持ってきたばかりの新しいドレスに身を包んだナディアは裾を踏まないように気を付けながら馬車に乗った。
リュカの白昼堂々の交際宣言の後、リュカはこれから社交パーティにナディアを連れていくと両親に告げ、持ってきたプレゼントの一箱の封を開けるとナディアに着替えを命じた。ナディアが着替えている間、リュカは両親からの質問攻めに付き合ってくれていたおかげで、ナディアが2人に尋問される事だけは避けられた。帰ってきてから何を聞かれるかはわからないけれども。
支度を済ませて客間に戻ると、リュカはもう一つ二つと包みを開けてネックレスや髪飾り、ハイヒールを取り出しナディアに一つ一つ着けてくれたのだった。それも、両親の見ている目の前で。ナディアは、何度も自分でやれると申し出たけれど、またさっきの捨てられた子犬のようにしょんぼりとした顔で「迷惑ですか」なんて言われるものだから、仕方なくされるがままになる他なかった。
「怒っていますか?」
馬車が走り出すとリュカが前を向いたままナディアに言った。ナディアは考える。何か怒るようなことがあっただろうか、と。
「私の好意は迷惑でしたか?」
捨てられた子犬のようにしょんぼりと悲しそうにリュカはつぶやいた。その声にナディアは動けずその場に固まってしまう。そんな風に言われたら、誰だって断れない。
「迷惑なんてとんでもないです・・・。では、ご厚意に甘えて失礼いたします」
しぶしぶ隣に座ると、ふわりとシトラスの香りがナディアの鼻をくすぐった。その久しぶりの香りになぜかいたたまれない気持になる。
「狭い屋敷で申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ突然お伺いする無礼をお許しください」
「そんな無礼なんてとんでもない!公爵さまのようなお方に来ていただけるなんて我が家は光栄です」
それで先ほどの事ですがーーーと父が話を戻した。
「せっかくご用意してくださったのに大変心苦しいのですが、お詫びの品は身に余るほど頂きましたので、こちらの品はどうかお引き取り頂けないでしょうか」
ナディアは、事の成り行きをただここに座って待つしかなかった。
「リシャール伯爵のおっしゃることはごもっともです。ただ、今日のプレゼントは、先日のお詫びではありません」
「・・・・と申しますと・・・?」
「恋人に贈るプレゼントとして持ってまいりました」
「っ!?こ、こ、恋人!?」
二人の視線はリュカからナディアへと移される。本当なのか?と。
「えぇ、実は、先日お会いした際に、ナディに・・・リシャール伯爵令嬢に交際を申し込んだのです。今日は、お二人にご挨拶も兼ねてこうしてお伺いした次第です。お二人がご存じない所を見るとどうやらナディは恥ずかしがりやの様ですね」
にっこりと薔薇の花が綻ぶように優雅な笑顔を浮かべるリュカを横目に、ナディアは心の中で頭を抱える。
(終わった。全てが水の泡に消えた・・・)
両親の視線を痛いほど感じながら、仮面の下で目を閉じた。
◇◇◇◇
「では行って参ります」
「失礼のないようにね」
「楽しんでおいで」
「大切なご令嬢をしばしお預かりします」
馬車まで見送りにきた両親にリュカはそういってナディアを馬車にエスコートする。さっき、リュカが持ってきたばかりの新しいドレスに身を包んだナディアは裾を踏まないように気を付けながら馬車に乗った。
リュカの白昼堂々の交際宣言の後、リュカはこれから社交パーティにナディアを連れていくと両親に告げ、持ってきたプレゼントの一箱の封を開けるとナディアに着替えを命じた。ナディアが着替えている間、リュカは両親からの質問攻めに付き合ってくれていたおかげで、ナディアが2人に尋問される事だけは避けられた。帰ってきてから何を聞かれるかはわからないけれども。
支度を済ませて客間に戻ると、リュカはもう一つ二つと包みを開けてネックレスや髪飾り、ハイヒールを取り出しナディアに一つ一つ着けてくれたのだった。それも、両親の見ている目の前で。ナディアは、何度も自分でやれると申し出たけれど、またさっきの捨てられた子犬のようにしょんぼりとした顔で「迷惑ですか」なんて言われるものだから、仕方なくされるがままになる他なかった。
「怒っていますか?」
馬車が走り出すとリュカが前を向いたままナディアに言った。ナディアは考える。何か怒るようなことがあっただろうか、と。