◇◇◇
リュカの呼び出しはまたしても神出鬼没だった。
「ナディアさま、お迎えにあがりました。お乗りください」
孤児院へ向かう途中、このあたりでは珍しく馬車が走っているなと思ったらそれはリュカの馬車だった。
ナディアの目の前で停まると御者が降りてきて馬車のドアを開けてステップを下ろす。
「あ、あの・・・今から孤児院へ向かうところなんです。今、手伝いのリリアーヌさんが体調を崩していて、私が手伝いに行く約束をしているので・・・」
「それならご心配には及びません。旦那様が代わりの者を手配済みでございます」
(手配済みって・・・)
さすがはリュカ、抜かりがないというかなんというか。
しかしそんなことを急に言われても、困る。
どこの誰だかわからない人が来ていきなり「ナディアさまの代わりにお手伝いします」とかなんとか言ってるのだろうか。
院長や子どもたちがとても心配になった。
(けれど、これは契約でもあるし・・・)
生真面目なナディアは馬車に乗り込んだ。
「あぁ、ナディア、また突然呼び出してすみませんでした」
「公爵さま、ごきげんよう」
連れていかれたのは、リュカの邸宅。
客間に通され待っていると程なくしてリュカがドアを開けて入ってきた。
ソファから立ち上がったナディアの肩に手を添えて、再び座るよう促しながらリュカも隣に腰掛ける。
いつものシトラスのオーデコロンに包まれた。
タイミングを見計らったかのように、使用人がお茶と菓子を2人分そっと置いていった。
ナディアの分はすでに出されていたのに、新しいそれと取り換えられた。きっと、冷めてしまったとかそんな理由だろう。
なんて贅沢なんだろう、もったいない。
「会いたかったです、ナディ」
会うやいなやさらりと甘い言葉をささやかれ、顔が熱くなる。
男性経験のないナディアは、こういう時なんと返せばいいのかわからなくてうつむくしかない。
「照れてる姿も可愛いですね」
「こ、公爵さま、からかわないでください」
嬉しそうににこにこ笑うリュカに悪気は一切感じられないが、それが余計に恥ずかしい。
きっとこの人は会う女性みんなに歯の浮くような甘い言葉をささやいているに違いない。
なんといっても、社交界一の色男なのだから。
リュカの呼び出しはまたしても神出鬼没だった。
「ナディアさま、お迎えにあがりました。お乗りください」
孤児院へ向かう途中、このあたりでは珍しく馬車が走っているなと思ったらそれはリュカの馬車だった。
ナディアの目の前で停まると御者が降りてきて馬車のドアを開けてステップを下ろす。
「あ、あの・・・今から孤児院へ向かうところなんです。今、手伝いのリリアーヌさんが体調を崩していて、私が手伝いに行く約束をしているので・・・」
「それならご心配には及びません。旦那様が代わりの者を手配済みでございます」
(手配済みって・・・)
さすがはリュカ、抜かりがないというかなんというか。
しかしそんなことを急に言われても、困る。
どこの誰だかわからない人が来ていきなり「ナディアさまの代わりにお手伝いします」とかなんとか言ってるのだろうか。
院長や子どもたちがとても心配になった。
(けれど、これは契約でもあるし・・・)
生真面目なナディアは馬車に乗り込んだ。
「あぁ、ナディア、また突然呼び出してすみませんでした」
「公爵さま、ごきげんよう」
連れていかれたのは、リュカの邸宅。
客間に通され待っていると程なくしてリュカがドアを開けて入ってきた。
ソファから立ち上がったナディアの肩に手を添えて、再び座るよう促しながらリュカも隣に腰掛ける。
いつものシトラスのオーデコロンに包まれた。
タイミングを見計らったかのように、使用人がお茶と菓子を2人分そっと置いていった。
ナディアの分はすでに出されていたのに、新しいそれと取り換えられた。きっと、冷めてしまったとかそんな理由だろう。
なんて贅沢なんだろう、もったいない。
「会いたかったです、ナディ」
会うやいなやさらりと甘い言葉をささやかれ、顔が熱くなる。
男性経験のないナディアは、こういう時なんと返せばいいのかわからなくてうつむくしかない。
「照れてる姿も可愛いですね」
「こ、公爵さま、からかわないでください」
嬉しそうににこにこ笑うリュカに悪気は一切感じられないが、それが余計に恥ずかしい。
きっとこの人は会う女性みんなに歯の浮くような甘い言葉をささやいているに違いない。
なんといっても、社交界一の色男なのだから。