驚きすぎて、言葉も出ないで目を見開くナディアをリュカはくすくすと笑いながら見つめていた。
 いたずらっ子みたいに笑うリュカを見て、からかわれたのだと気づいたナディアは、また顔が熱くなっていく。
 それにしても、リュカのその観察眼には驚かされっぱなしだった。ナディアの考えることなんて、手に取るようにお見通しなんだろう。

「公爵さま、本当に何から何まで感謝いたします。私はどうお礼をしたら良いのでしょうか」
「お礼なんて、良いんですよ。私がしたくてやっていることです」
「あの、どうして公爵さまのようなお方が、私のような者を恋人役にする必要があるのでしょうか?」

 それは、どうしても腑に落ちない疑問だった。
 リュカのように地位も名誉もあって、容姿端麗な文句の付け所のない人が、わざわざ自分のような「訳アリ」をお金を払ってまで雇わなくとも、どこぞの高貴なご令嬢がわんさか寄ってくるに違いないのだ。

 ナディアの質問に、リュカは「そうですね・・・」と考えてから話し出した。