「プレゼントです。寒くなってきましたから。これは北部で捕れるホワイトフォックスの毛皮で保温性に優れているそうです」

(ホワイトフォックスって……確かとても稀少な……)

「思った通りよく似合ってます」
「とても暖かいです、ありがとうございます」

 そういうことに疎いナディアでも知っているくらい、高級なものだった。
 しかしナディアは、最近になってリュカからのプレゼントに対して拒絶反応を見せなくなった。好意を素直に受け取る方がリュカは喜んでくれると自分に言い聞かせて、できる限りありがたく受け取ろうと心に決めたのだ。

「レオンとシャルロットにもブーツなどを用意しました。差し出がましいとは思ったのですが……、ご両親の分もありますからナディアから渡してもらえると」
「そ、そんなにたくさん……」
「今年の冬は例年より寒さが厳しくなるようなので、備えあれば憂いなしです」
「お心遣い、ありがとうございます」

 喜ぶ家族の顔を思い浮かべながらも、ナディアの心はなにかに鷲づかみされたように苦しかった。

(怖い……。リュカさまに捨てられる時がくるのが怖い……)

 光が強くなればなるほど闇が色濃く鮮明になるように、リュカの優しさに触れれば触れるほど、ナディアの“その時”に対する恐怖心は膨れ上がっていくばかりだった。

 リュカへの想いを自覚した今、自分に出来ることはこうしてリュカの優しさに身をゆだねていることしかできない自分が情けなく歯がゆかった。

 リュカが自分を必要としてくれている間だけでも側にいると決めたナディアだったが、その心は”その時”への恐怖心に今にも粉々に砕けそうだった。