そして翌日。晴れて進路も決まり、鳴海は清々しい気分で卒業式を迎えた。桜のつぼみはまだ硬いが、鳴海の心はもう新しい生活へと半分飛び立っていた。勿論残りの半分は、由佳との別れを惜しむものだ。

卒業式もつつがなく終え、教室で担任から最後の挨拶を聞いたあと、由佳と一緒に校門を目指した。あそこを超えてしまうと、もう今までのように毎日会うことはなくなる。寂しかった。

「メッセ送るね」
「時々手紙も書くわ」
「一人暮らしの部屋、遊びに行っても良い?」
「いいわよ、大歓迎!」

くすくすと笑いながらゆっくりと校門に近づく。校門の脇に植えられた大きな桜の木の下に、梶原が佇んでいた。その視線がこちらを見る。その表情が真剣で、……ただ卒業式だったから、という真面目な顔ではなかった。

(お……っ、いよいよ覚悟を決めたのかな……。そうだよね、私と違って、梶原はもう、由佳と繋がりがなくなっちゃうんだもんね……)

それならもっと早くに行動に移せばよかったのに。そう思ったけど、じれじれと焦らされながら、別れの機会にならないと行動を起こせない優柔不断なキャラも、二次創作でかなり読んできた。読者(なるみ)としては焦らされたが、梶原と由佳が、晴れてハッピーエンドを迎えるなら、それも良いと思う。梶原は基本的に悪いやつではないし(ゆめかわオタクであるというだけで)、由佳は、超が付くほどいい子だ。
ホクホクとしながら、鳴海が由佳と歩いていると、桜の下に立っていた梶原がこっちへ向かって歩いて来た。

(キタワアーーーーーーー-!!!)

いよいよここで梶原の一世一代の告白か!! そう思って半歩、由佳の後ろに控えた。そのとき。

「い……、い、市原!」