しばらく石畳を進むと、チラホラと建物が見え始めた。どれも和風の建物で、(かわら)屋根に朱色に塗られた木造の柱、白い壁は神社のようにも見える。

(神様たちが住んでいるだけあって、建物が神社みたい)

 初めて見る光景が物珍しく感じられ、辺りをきょろきょろと見回す。

「陽茉莉、こっちだよ」

 相澤が促したほうを向くと、長い塀越しに大きな屋敷が見えた。数寄屋門の先には大きな池。その向こうには、左右対称に広がった大きな建物がある。

 濃い灰色の瓦屋根と柱や梁の朱色が対照的で、間を埋める白い壁がひときわ眩しい。昔、修学旅行で訪れた京都の平等院鳳凰堂(びょうどういんほうおうどう)を思わせる建物だ。

「すごい……。大きなお屋敷」

 想像を超えた規模に、感嘆の声が漏れる。敷石を踏んで建物に近づくと、白と朱色の(はかま)姿の少女が竹箒で掃き掃除をしていた。