『――えーっと。撮れてるかな? うん。これでいっか。
 こんにちは、アズです。相変わらず顔を隠しててごめんなさい。今日はちょっと思いついたので動画を撮っています。ああ、本当になんとなくだから。怖がらないで大丈夫だよ。
 ライブ、楽しんでくれているかな?

 ……うん。良かった。この日のために、自分の大好きな歌い手たちに片っ端から声をかけていったかいがあったよ。楽しんでくれていたら自分も嬉しいです。

 ――さて、少しだけアズの話をしようか。

 今回、合同ライブを主催したのは、自分の夢を叶えたかったからなんです。
 実は持病の治療に集中するために、しばらくお休みしようと考えています。でも休止前に何か大きなことをしたいと思って、このライブを計画しました。

 このステージに立っているのは、自分がまだ動画投稿をしていなかった頃に集まった仲間たち。いつかこのライブハウスで、毎公演チケットが売り切れるようなライブをする。――それが自分が叶えたい夢。今も、これから先もずっと叶えるために生きると決めた希望。

 自分がここまで大きくなれたのは、あなたの声があったからです。感謝しきれません。
 自分も人間だからいつか死ぬし、この世界から姿を消えてしまう。それは仕方のないこと。

 でもね、いつか自分が居なくなったとしても、今まで投稿した動画の中で歌っている。
 自分が作った曲が誰かを通じて広がって、生き続けるかもしれない。

 それでも今が辛いなら、自分の声であなたを救えるのなら。空の上でも土の中でも、どこにいたって、ずっとあなたに届けるよ。
 晴れて澄み切った群青の空が続くように、あなたが明日も生きてくれるなら、この先もずっと歌ってみせる。
 もう一回、もう一回だけあなたが前を向いてくれたそのとき、自分はどの瞬間よりもずっと、生きていてよかったと思えるから。

 ……こんなに正直に話したことないから、一人で撮っているのが恥ずかしいね。

 それじゃあ最後に、大切な仲間たちへ。
 活動当初から応援してくれているあなたへ。
 画面越しで見守ってくれているあなたへ。
 アズという人間と出会ってくれてありがとう。
 アズの歌を愛してくれてありがとう。

 生きていてくれて、ありがとう。

 どうかこの歌があなたの救いになりますように。
 愛を込めて。――アズ』