枕の横に置いたスマホを起動させる。上手く充電ができなかったようで、赤いランプが点滅していた。コードを挿し直すと、充電中を表すオレンジのランプが点灯する。画面に表示された通知には、メッセージが数件届いていた。
 どれも同じような、心配する文面ばかり。

『大丈夫、頭痛が辛いだけ。学校はまだ難しいかな』

 同じ文をコピペして全員に返し終えると、最初に返ってきたのは学級委員の子だった。

『無理しないでね。いつでも待ってるから』

 なんとも返しやすい、無機質な文が並んでいた。他にもバイト先の店長や先生からも同じ内容がどんどん送られてくる。こんなにメッセージをもらうなんて、小学校の卒業アルバムの最後のページに書いてもらった寄せ書き以来かもしれない。
 これにも「ありがとう」とコピペして返信する。別の言い訳を考えるのはもう疲れてしまった。しばらくしてまた頭痛が襲ってきた。スマホのランプがオレンジから赤に戻っているのに気付いて、もう一度挿し直す。赤の点滅から変わることはなかった。

「……予備のコード、どこだっけ」

 布団の上で這いつくばるように、充電コードが入っているベッドサイドの引き出しに手を伸ばす。乱雑に入れられた引き出しの中からコードだけを取り出そうとすると、貰い物のイヤフォンまでついてきた。
 青のコードが虚しく揺れるのを見て、また頭が痛んだ。
 寝ていても押しつぶされそうな、重力に押しつけられている感覚は未だに慣れない。コードが絡まっていて戻すのも面倒になると、どちらも引っ張り出して充電コードを交換する。ランプがオレンジ色に点灯したのを見計らって、イヤフォンも繋げて動画サイトを開いた。