それからの私は、自分でも考えられないほど前向きになった。公立高校に入れるように教科書や参考書、プリントを繰り返し解いた。必要最低限の授業は出席したけど、前に出て答えることも挙手もしなかったし、先生も考慮してくれた。テストの成績は上位にいるけど、授業に出ていないから内申点はかなり低い。

 それでもなんとか今の高校に入学することができた。通信制も考えたけど、両親の意向で定時制に通うことになった。
 でも体育館で行われた入学式は息苦しくて、ダメ元で用意した耳栓をして臨んだけど、人の多さに圧倒されてダウン。クラスメイトの顔は一人も覚えられなかった。
 入学式後から数日間のオリエンテーションを終え、通常授業に移行して一ヵ月。耐え切れなくなって教室で過呼吸を起こしたのをきっかけに、私は保健室登校に切り替えた。

 教室に行くのが怖い。話しかけられても答えられない。仲良くなんてフリしかできない。
 人と接することが苦手で、人の多い場所にずっと居続けることができない私には、狭い空間にぎゅっと人が集まるライブ会場に足を運ぶことは難しい。
 どれだけ楽曲を聴き込んでも、雑誌やCDを買っても、直接対面したいとはなぜか思えない。画面を隔てているだけで、遠くにいるアズを見ているだけで幸せだった。

 遠い存在でも、アズが存在する事実こそが、私の生きる意味であり証だと言ってもいい。
 スマホの小さな画面の向こうでアズがいるという事実だけで、私はこの世界に満足していた。
 生きる意味があるからきっと、死ぬことを選ばないと思った。