突然に、場がシンと水を打ったかのように静まり返る。異世界に飛ばされた気分だ。

 騒がしかった異形たちが白い繭に包まれた状態で沈黙していた。

 私の目の前にも、すりガラスのような壁がある。

 前足を伸ばしたつもりが、身体はぴくりとも動いていない。

 しまった、油断した!

 永遠のときを過ごしてきたが、私自身が命姫の繭にとらわれてしまったのは初めてのことだった。

 どれだけ強大な力の持ち主なのかと、瞳だけを動かして周囲を見渡す。

 拍子抜け。そう、その言葉が一番しっくりくる。

 庭に現れた人間はひとりだけ。

 ゴボウのようにガリガリの身体をしたみすぼらしい少女だった。

 下働きの娘だろう。からし色をした格子柄の着物はあちこち擦り切れていて、なんとも貧しそうだ。

 私はじっと彼女をにらむ。勝負を挑むように。

 すると、私を包んでいた繭がぐにゃりと溶け、自由の身になった。私の妖力が彼女のそれに勝ったのだ。

 といっても、彼女のほうは自分の力を意識してもいない。そんな相手に勝ったところで、ちっともうれしくはない。

 わたし以外の異形たちも次々と彼女に勝負を申し込むが、勝利できたのは私だけ。

 それはそうだろう。この程度の有象無象の異形に負けるようでは、命姫の役割は果たせない。