私は遠い過去に思いをはせる。

 当たりを引いた当主は、はたして何代前だったか。エドの中期だったか、センゴクの世だったか……。

 ごくごくまれに、当主の寿命を延ばせる女がいるのだ。そして、その当主の代、東見は決まってこれまで以上の栄華を極める。

 そんな幸運の女神を、東見の人間は〝命姫(みことひめ)〟と呼ぶ。  

 命姫と出会いさえすれば、雪為もあるいは――。

 雪為のがうつったのか、私も「くあぁ」とひとつ、大きなあくびをする。

 周囲では小鳥がさえずるように、異形たちがペチャクチャとおしゃべりをしている。

『あの男が……憎い、憎い、憎い……』
『かかさまはどこ? どこにいったのかな? ねぇ、知らない?』
『我ほどの男が、どうしてあのような最期を? わからぬ、わからぬな』

 ひとくちに異形と言っても、いろいろな者がいる。

 私のように人畜無害な者もいれば、怨念にとらわれ人間に悪さばかりする者も、はたまた悪意なく人間の生命力を奪ってしまう者も――。

 共通項は総じておしゃべり好きなことだ。異形は暇を持て余しているから、雪為のように話を聞いてくれる人間のもとに集まってきやすい。

 彼のいる空間はいつも賑やかだ。

 ん――?