初音は涙でぐしゃぐしゃになった顔で、なお訴える。

「私にそれを教えてくれたのは……雪為さまです」
「初――」

 雪為が彼女を呼ぶ声は、初音の唇で塞がれた。

 その甘やかな口づけが、雪為の決意を揺らがせたことに私は気がついた。

 ふふっと笑いながら、彼に告げる。

『これは勝負あったわね。たしかに、初音は強い』

 雪為が恨みがましい目で私をにらむ。

 ふたりの幸福がうつったのだろうか。私の心までポカポカと温かくなった。

 その瞬間、私は自身の身体が重い鎖から解き放たれたのを感じた。

 軽やかに、どこまででも飛んでいけるような気がした。