なんと勝手な言い分か……そう思うものの、ある意味では雪為の主張は正しいのかもしれない。

 初音には成匡がいる。女はか弱い生き物だけれど、母親はしぶとく逞しい。

 我が子のためなら聖母にも修羅にもなれるのが母親という存在だ。

 だが、当の本人はまったく納得できなかったらしい。

 スパンと小気味よい音を立てて、障子が開かれた。

 怒りに全身を震わせた初音が、こぶしを握り締めて仁王立ちしている。

 なにがなんだかわからぬ顔で、成匡は母親と、もうすぐ死のうとしている自身の父親を交互に見比べている。

「……初音」

 驚きでかすれている雪為の声を遮って、初音は叫ぶ。

 今の会話で自分が追い出された本当の理由を知ったのだろう。

「雪為さまは……最低です! クズです、クズ! 成匡の父として恥ずかしいとは思わないのですか」

 あまりの勢いに、雪為はもちろん私まで気圧されてしまった。

 初音は顔を紅潮させて、ありとあらゆる罵詈雑言を彼にぶつけた。肩で息をする初音を見て、雪為は幸せそうに目を細めた。