私はふたりをともなって、雪為の寝室の前まで来た。

 以前の雪為なら、不審者の侵入など足音や気配ですぐに察しただろう。

 だが、今の彼は気づかない。いや、たとえ気がついていても、興味もないのだろう。

 侵入者に刺し殺されても、事切れる瞬間までなんの反応も示さない。

 そんなシーンが目に浮かんだ。

 ここで待ってて。

 仕草でそう示して、私はひとりで彼の部屋に入る。

 ふと思いついて、いつもの猫から姿を変えてみることにした。青白い煙が私を包む。

 寝台に横たわった雪為は、熱に浮かされていた。

 浅く息を吐くその顔はちっとも苦しげではなく、むしろ幸せな夢のなかを生きているかのように、恍惚としていた。

 私は彼の枕元に座り、じっとその顔をのぞきこむ。

「……初音?」

 寝ぼけているようだ。

「あぁ。違う、ネコか。なんだ、その姿は」

 私は答える。もっとも、雪為の耳には届くだろうがほかの人間には聞こえない。

『私の……本来の姿よ。どう? 綺麗でしょう』

 私は彼の前でくるりと回ってみせた。