雪為もようやく気がついたようだ。

「初音が弱っているのは……俺のせいか」

 否定する材料を探したいはずの彼をあざ笑うように、私は「ニャオン」と鳴いた。

 そうよ、そのとおり。初音を殺すのは、異形たちではなくお前よ。

 東見の男は本当に罪深い。

 さぁ、雪為。あなたはどういう決断をくだすのかしら?

 祖先がそうしてきたように、『愛している』とささやいた女を、自分のために平然と見殺しにする?

 ねぇ、楽しませてね。失望とともに永遠を過ごすしかない私を、退屈させないで。

「お前とは離縁する。成匡を連れて、すぐに出ていけ」

 迷いのない口調で、雪為は静かに告げる。

「どうして……」

 対する初音の声は弱々しい。困惑と恐れで、瞳は惑うように揺れている。

「私は東見の当主だ。その私が決めたこと。理由を説明する必要などない」

 膝の上で握り締めた初音のこぶしにぐっと力がこもる。

「でも、私は命姫なのでしょう? 私がいないと雪為さまは……」

 初音の必死の言葉をさえぎって、雪為は言い捨てる。

「だから、それが理由だ。弱ってきた命姫など不要」

 雪為は斜め上に視線を動かす。

 嘘をつくとき、人間が無意識にする仕草だ。