「命姫の産んだ子は妖力が強いと聞くが、その数は極端に少ないのだな」

 子は宝だ、貴重な労働力でもある。

 ひとりの女が七人も八人も産むというのも、珍しい時代ではない。

 だが、ひとりの命姫の産む子は多くてもふたりほど。

 雪為は顎のあたりにこぶしを当てて、考え込む。

「孕みづらい体質か、産後の肥立ちが悪いのか、そもそも……短命か」

 短命。

 その単語を発した瞬間にピンとくるものがあったようだ。

 雪為の表情が凍りつく。

 もっとも、私からすれば「なにを今さら」という言葉しか出てこない。

 異形を包む行為はとてつもない生命力を消耗する。

 意識せずに異形を包んでしまう命姫は、たとえ東見の男と出会わなくても、あまり長生きはできない。

 だが、この屋敷に集まってくる異形は数も力も桁違いだ。消耗スピードは異次元に速く、もともと長くない寿命はあっという間に尽きてしまう。

 当主が彼らに捧げていた命を、代わりに差し出す存在。それが命姫の正体だ。

 最愛の花嫁だなんて綺麗な言葉で装飾しても、実態はただの生贄でしかない。